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今日のできごと
Last Modified : Sat, January 06 22:02:43 2018
2002-03-28 / 今日のできごと
仕事で中学校に行った。校門の前で、僕は ZONE の曲がラジオから流れるのを聴いていた。
車の中で、タバコをふかしていると、「コンコン」と、窓を叩く音がした。見るとこの学校の生徒だろう、制服で困った顔をしていた。僕が、ドアを開けると彼女は申し訳なさそうに言った。
「友達と約束があって、地下鉄の駅まで行きたいんだけど、バス代がないんです。もしよかったら、駅まで乗せて行ってくれないですか?」
「ああ、いいよ。もう僕も出るとこだったし、駅まで近いしね」
そうして、中学生を乗せた僕は、地下鉄の駅まで行くことになった。ラジオから流れる ZONE は、僕たちの間を抜けていった。自然と話せるわけもなく、沈黙の中で彼女たちの歌は流れた。若々しい歌声だった。
「ZONE ですね。」彼女は言った。
「そうだね。好きなのかい?」僕だって、まだ若い娘の歌は知っているのさ。
一瞬、間が空いて彼女は答えた。「うん。好きですよ」
「そっか。」
………。っぷ。
なんだか、変な間が空いて、二人とも吹き出して笑ってしまった。28 才の僕と、14 才位の彼女は、生きている時間が倍違うのだ。そう考えるとなんだか、不思議な気がした。僕が、彼女と同じ歳の時に、僕は、誰かに恋して、誰かを傷つけていたのだ。そして、彼女はその頃生まれたのだ。
駅についた。「ついたよ。ここでいいかい?」
「はい、ありがとうございます。とんでもないお願いだったのに、本当すみません」
「いやいや、いいよ。全然問題じゃない」僕は、本当にこちらに車で来ることになっていたのだ。
彼女は、おもむろにカバンを開けると、何かをゴソゴソ探している。「はい、これプレゼントです!」CD ショップの袋に包まれた何かを、彼女は、僕に渡した。「いいよ、いいよ。本当に」僕は、遠慮する。
「それじゃ!」と、声が聞こえたかと思うと、彼女はドアを開けて、あっという間に降りると、手を振りながら地下鉄の駅に歩いていった。彼女が座っていたシートには、しっかりと先ほどの「プレゼント」が置かれていた。彼女が、地下鉄の駅に降りていくのを確認すると、僕は、その包みを開けてみた。
シングル CD が、入っていた。ZONE と書いてある。さっき聴いた曲かな? と、思いながら包みを開けて、中を見ると、先ほどまで僕の隣にいた、彼女の写真があった。
うん? 頭の中が整理できない。彼女は隣に座っていた。ここに CD がある。ZONE の CD だ。ここに彼女の写真がある±その彼女は、ここに座っていた。僕は、何だか混乱して、友達に電話してみた。
「ねぇ、ZONE て知ってる?」
「ああ、知ってるよ。彼女たちいいよね」
「うん。まさかとは思うけど、彼女たちって、札幌の人で、しかも中学生?」
「うん。確かそうだったと思った」
「そうか。ありがとう。また今度飲みに行こうぜ」
「了解、またな」
「ああ」
どうやら、僕は ZONE のメンバーの子を車に乗せて、地下鉄の駅まで送ったようだ。
なんて、ことがあったら面白いですね。
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