当時発表していた読み物
FM の DJ が今日の札幌は雨だと英語交じりの変な日本語で伝える。アキはベッドで目覚ましがわりの携帯電話のアラームを止めた。目覚めの悪い朝。昨夜遅くまでカズと遊んでいたせいもあり、とても眠い…頭がまだ寝ていろと指令を出している。軽く頭を振る。雨の音が誰もいない部屋に侵入してくる。いや、音ではなく空気と言った方が正しいかもしれない。おもむろに半身だけ起こすと、サイドテーブルのセブンスターに手を延ばす。火を付けると、ため息と一緒に煙を吐き出す。煙草の甘い味が口の中に残る。少し雨の匂いがする気がする。今日は、街でカズと約束していた。CD を見て、ドラムスティックを買いに行くだけだ。よくある土曜。そういえば、今何時だろう?ふと見たデジタル時計は 9:05 と告げていた。
10 時に家を出ると地下鉄に飛び乗る。通学で毎日乗るが今日は土曜で見慣れない乗客ばかりだ。彼らを一通り眺め、小学校に入ったばかりの頃、他の教室に間違って入った事を思い出した。見慣れない顔、見慣れない張り紙…。開いた席に座り、最近買った CD を聴く。目の前には疲れきったサラリーマンが日本経済新聞を広げている。髪はきれいに七三に分けられている。「あぁはなりたくねぇな」心の中で呟く。そんなことも知らずサラリーマンはガムを噛みながら新聞を見ている。何か蠢く生物が彼の中にいることを想像したら、さっきの煙草の嫌な味がした。地下鉄の中は雨特有の生臭い匂いがたちこめている。アキは、傘をクルクル廻し弄ぶ。隣の中年女性が周りを気にせず、ヘッドホン越しでも聞こえる大きな声で話している。アキが好きな CD の曲も変に安っぽい物に聞こえる。アキは、まだ一つ駅があったが席を立ち、ドアの前で英会話の広告を眺めた。若い男がその教室で如何に話せるようになったかを述べていた。「一体何の必要があり英会話なんか習うのだろう?」アキは考えてみた。そんな状況はそれほど多くないような気がした。ヘッドホン越しに男の声がした。「次は大通、大通」車掌がこもった声でアナウンスする。アキはドアが開くと真っ先に地下鉄から降りた。約束の時間まではまだ少しある。地上に出ると、雨は止み曇空に体にべっとり張り付くような湿気…アキは、駅前のメインストリートから東に一本行った道を南に向かった。
地下にあるその楽器店に入ると、大音量のロックが流れている。アキはいつもの銘柄のドラムスティックを無愛想な店員に告げ受け取り会計を済ませると、ふと目に入ったスコア(楽譜)を手に取った。以前ギターを買ったばかりの頃、わからない演奏はここで立ち読みしたものだ。しかし、ギターでは自分が思う音が出せず、ドラムに挑戦した。思ったより愉しい、周りの受けもいいこともありそのまま続けている。
「キャー!!」女性のその大きな声でアキは、思わず本を落としそうになった。声の方を見ると背の低い女の子がこちらに向って走り、強ばった顔でアキの後ろに隠れる様に身を屈めた。微かに柑橘系の香水が匂った。「どうしたの?」と言いかけると、前から「早く戻りなさい」と落ち着いた声が聞こえた。見ると中年の男性がこちらを見据えている。たぶんこの娘の父親だろう。彼が手を出すと娘は諦め、ゆっくりと立ち上がった。アキの横を彼女が通り過ぎる瞬間、アキは目を奪われた。金髪に綺麗に染め上げた髪、黒くて大きい二重の瞳、きゃしゃなその体…アキはその僅か数秒にズキッと胸が動いた。そんな感覚は久しくなく、鼓動を長く感じる。娘は、男性の後ろを黙って歩いた。「振り返ってくれ」そんなことを念じるが、娘は黙って歩いた。地上へ上がる階段に消えるまでアキは見つめていた。そして本を投げ置き店を出た。
カズはアキの後任のギターで、音楽の趣味が合うので、レコード店はいつも一緒だ。CD を買うと、すぐに別れ、アキはすすきの方面に向かった。空は晴れ、すでに夕闇が西から浸食してきた。薄暗い空から地上に目を落とすと、店のディスプレーやネオン、街灯が目に突きささる。すすきのに来たのには理由があった訳ではなく、ただ誰もいない自宅に帰るのがなんとなく嫌だったからだ。歩いている人々はこれから始まる宴に心弾ませ誰もが楽しそうだ。スーツの男性、頼りない足取りの厚底靴の少女、彼女達を品定めする髪の長い少年達。角地にあるシャッターが降りたデパートの前を通過するアキに少女の歌声が耳に入ってきた。何故か耳に残るその声の主に目を向けるとなんと彼女だった!楽器店で見た彼女とは別人の様に生き生きしたその顔はアキの目を釘付けにした。金髪を揺らし、ギターをかき鳴らしている。アキは彼女の様子を暫く眺め、ゆっくりと目の前に座った。彼女はちょっと微笑んだ気がした。1曲終わると、ぱらぱらと拍手が鳴った。アキはその音で我に帰り少しだけ拍手をした。彼女はすこしはにかむと、ギターネックを握り直しオープンで G のコードを鳴らした。普段聴く G より悲しげに聴こえた。彼女の歌が始まった。
彼女の歌はあまりうまいとは言えなかった。というよりヘタと言った方が正しいと思う。しかし、アキには彼女の声が、何故かとても魅力的に感じられた。少女のようなその声は目をつぶればもっと幼く感じる。人は時にアンバランスに魅力を感じるのかもしれない。歌が終わった。彼女は「最後の曲です」と、笑いながら言った。最後の曲はバラードでとても優しい曲だった。彼女の音域に合っていたし、耳に心地良かった。アキは曲が終わると、心から拍手した。彼女がギターを片付け始めるとギターケースにお金がちらほらと投げ入れられた。アキは、財布から千円札を取り出しそっと置いた。彼女はにこっと微笑み(本当に天使のような微笑みだ)アキはどんな顔をしていいか解らずぎこちなく笑った。アキがその場を離れようとすると彼女が呼び止めた。「ねぇ!待って」アキはびっくりして振り向く。彼女はギターを重そうに背中に抱えジーパンに手を突っ込んで、にこにこしながらアキを下から見つめる。「なんだよ?」アキは何と言っていいか解らずぶっきらぼうに言う。そして、何故そんな言い方をしたのかすぐ後悔した。彼女は顔色を変えずに言った。「なんかオナカすかない?vアキは朝パンを食べて以来何も食べてなかった。「うん」「じゃ、何か一緒に食べない?」「そうだねぇ…」アキは次の言葉を考える。「行こ!」彼女は手をポケットから出し、アキの腕を取った。「居酒屋でいい?」「う、うん」彼女の手は温かい。アキは財布の中を思い出す。(さっき千円あげて残りは…何とか大丈夫だ)「じゃ行こうか」アキは新鮮な気持ちになった。考えてみたら女の子に腕を組まれ歩くのは高校以来だ。
乾杯が済むと、彼女がまず口を開いた。「今日はアリガトね!」「うん…」「私、今日で歌うの辞めるんだ」「えっ?」「今日見たでしょ、お父さん」「うん」アキはビールを飲んで続きを待った。「親が厳しくて、辞めろって、今日が最後だって許して貰ったんだ」「…」何と言えばいいか解らない。彼女はお通しを箸でつついている。「私の歌下手でしょ?」彼女は微笑む。悪戯っぽい目でアキを見る。ジョッキの雫がテーブルに落ちた。アキが「最後の曲がすごくステキだったよ」と言うと彼女は「ありがとう」と答えた。なんてかわいいんだろう。アキは彼女を見ながら思った。「そう言えば名前教えてなかったね。メイって呼んで」「うん、俺はアキだよ」二人は自然に空になりかけのジョッキを軽くぶつけあった。ごつんと小さな音がした。何故かおかしくてアキは吹き出す。メイもつられて吹き出す。
メイの話は、楽しそうだが、時々する悲しげな表情をした。二人でおなか一杯になり、メイが「ごちそうさま」と言うと席をゆっくり立った。メイが先にすたすた歩いて行く。アキは後を追う。メイは先に店を出る。アキは財布を取り出した。アキが財布を開けると、血の気が引いた。全然足りない。考えたら、スティックや CD を買っていた。青い顔でメイを見ると状況を察知したらしく、「私もないわよ」とゼスチャーする。そして、ぐるっと店内を見回し、ウィンクした。アキは 後ろも見ずに走りだした。メイもクルッと振り向き小走りになる。アキが店を出ると、二人とも全速力で走った。アキはメイに追いつき手を取ると二人で同じ速度で走った。
店が見えなくなるまで走ると、雑居ビルの前で自然に立ち止まり、しゃがみこみ息をととのえた。落ち着くと、目が合い、笑いが込み上げる。廻りは酔って二人が目に入らない。二人がどんなに大声で笑おうが誰も見ていない。その間も二人の手は離れなかった。メイは笑い止むと涙を流した。アキは笑ったからだと思ったが、メイが声を上げ泣いているのに気付き困った。「今日は俺しかそばにいてやれない。」そう考えたら、アキは何かがふっきれた。メイの腕を取ると、小さなビルの隙間を見つけ、メイを座らせた。止んだはずの雨がメイの髪に落ちる。アキはメイを抱きしめた。そうしなければならない気がした。メイはアキの背中をつかみ肩に涙を落とす。二人は、大降りになった雨と涙を服にたっぷり含ませ、体を密着させた。やがてメイが泣き止むとアキは微笑みかけメイに「家においで」と言う。メイは何も言わず頷く。アキはその小さく濡れた体を見るとひどく落ち着かない気持ちになった。誰より頼りなく、誰より人の温もりを求めていた。メイは涙を拭い笑いながらアキの手を握った。思ったより温かった。アキは手を引きすすきの駅に向かった。夜の街すすきのは、いつも通關キり上がった人々で騒がしい。その中の二人は雨の遊園地で迷子になった兄妹の様に見えた。メリーゴーランドの横を泣きながら母親を探す。雨は無情に二人を濡らした。
家に着くとアキはメイをシャワーに誘った。メイは「恥ずかしいから向こう見てて」とはにかむ。後ろ向きでアキは煙草に火を着けた。後ろでジーパンを脱ぐ音が聞こえる。アキはステレオのリモコンを拾いスイッチを入れた。WHAM! の「 CARELESS WHISPER 」が小さな音で流れる。マイケルはその夜”うかつな一言”でいい女を逃した。アキは膝をドラム代わりに叩いた。煙草を半分残しシャワーの音を聞きながら火を消した。アキは雨で脱ぎにくいシャツを脱ぐ。体が冷えている。アキはメイをびっくりさせようとシャワー室の照明のスイッチを切る。「わっ!」メイが驚く。アキは予想通りの反応に微笑んでしまう。部屋もシャワー室も真っ暗になった。マイケルは悔しそうにその夜のことを歌っていた。メイのいるシャワー室に入る。メイは「暗いよー」とはしゃぐ。照れ隠しだろう、言葉のどこかにぎこちなさがある。アキは冷えた体を温めようと裸のメイを抱き寄せる。細い体だ。胸の柔らかな膨らみをお腹の辺りで感じる。アキは下半身に疼きを感じる。大きくなるそれを止めることができない。メイも気づく。アキは照れくさくなり「大きくなっちゃった」とおどける。メイは泡のついた手でアキのそれに触れる。温かい。アキはそれに驚きメイの小さな額に口付けした。泡の手は先端を洗う。ぬるぬるした感触に「うっ…はぁはぁ」思わず声を上げる。アキは快感と暗闇の中で何か浮遊する感覚を覚える。暗闇の中に白い物が見えた。彼のモノにはしっかりとしたメイの温かさがある。メイは、シャワーを取り彼の泡を流した。アキのそれは痛いほどに起立している。メイがしゃがみこみ(アキはそれを暗闇の中で感じたが、子供のように小さく感じた)彼のものを、ゆっくり口に含んだ。アキは先ほどの手の感触よりも、親しみを感じ、そして快感に包まれる。メイの口の中では、舌が揺れ動く。右手は彼の睾丸にあり、濡れたそれはメイの手の中で少し動いた。メイの舌は先の方を刺激し始めた。「うぅ、…あぁ」アキはまるで女の子のように喘ぐ。舌が、彼自身の下側を這う。ぴくっと反応するアキに、メイは悪戯っぽい顔で微笑むが、暗闇で彼には見えない。やがて、メイはゆっくりとしたピストン運動を開始した。アキに、絶頂感が込み上げる。もうだめだ。そう思いながら「このまま彼女の中で果てるのもいいな」とも感じる。メイはそのゆっくりながら、確実に彼の感じるポイントを攻めた運動を続けた。暗闇の中で、メイの小さな影のようなものが揺れる。背中に電気が走る。「ぅうう、あああぁっ…」アキは、ゆっくりと彼女の口の中で果てた。メイは口の中の精液を臆することなく、飲みこんだ。苦いその味は、彼女を現実に戻す。アキは絶頂を越えて、少し余裕ができた。「今度は、メイが座って…」アキは、乾いた声で言う。自分でもその声に驚く。メイは、立ち上がりバスタブに腰掛ける。恥ずかしいのか、その足は固く閉じられている。アキは、彼女が前にしたようにしゃがみこんで、彼女の太股に両手を置いた。メイは緊張しているのか、それだけで、ビクンと体をよじる。メイの、そのか細い肢体をアキはゆっくりなぞる。あるポイントに触れると彼女は体を揺らした。その度に洩れる吐息にアキの下半身は反応する。顔、肩、背中、腰、太股とゆっくりなぞっていく。メイの体には全く無駄がなかった。胸には、アキの手に丁度収まる程の大きさの膨らみがあったし、背中や腰には余計な肉はほとんどなかった。ただ、まるで中学生のような身長がメイであることを主張しているようで、アキには好ましく感じられた。そして、暗闇を探るように手を伸ばし、メイの顔の位置を確認するとアキは彼女の小さな口にキスをした。アキは舌を絡めるが彼女はぎこちなく、何かを恐れるように遠慮がちに舌を動かす。アキには、それが少し不満になる。「まだ、心を開いてはくれないのか?」アキは彼女の顔を両手で確認しながら、耳に舌を移す。耳は髪の中に隠れていたが、構わず髪を上げてキスをする。「はぁ…」メイが声を洩らす。アキは舌を首筋に移動させ、彼女の反応を確認する。「ぅうん、はぁ…」メイは体を揺らし、軽く「いやいや」をする。アキにはそれがとてもかわいらしく感じ、体を寄せる。右手をメイの胸にやり、先の突起部を確認する。彼女の乳房の形、大きさにあった好ましい乳首の大きさだった。それを、人差し指と中指で軽く摘まむ。「あああぁ」メイは、堪らず声を上げる。彼女の腕はアキの背中で組まれ二人の距離はより近いものになる。アキは指で彼女の乳首を転がす。やがて、メイは我慢できず力が抜けたようにアキの背中の腕を放す。アキは自由になった体をメイから放し、胸に顔を近づける。メイは、体を揺らしちょっとだけ逃げる。アキはそれを、腕で体を寄せて構わず乳首を口に含んだ。舌を乳首にあて、ゆっくりと転がす。まるで子供のように吸ってみると、メイの声が変わる。「ああっ!んああぁ」アキは空いた手を彼女の太股に置く。そして、彼女の中心に向かってなぞる。ゆっくりと。メイは、足をビクンッ、ビクンッと動かす。そして、メイは諦めたようにゆっくり足を少しだけ開いた。アキは、その手を彼女の中心部へと移動させる。彼女自身に触れると、メイは、「んぁぁああ…」と体を硬直させながら、喘いだ。メイのそれはすっかり濡れ、熱い液にまみれている。まるで温かいゼリーのようだ。アキは、その温度と柔らかさを楽しむように、下から上に指を動かす。メイはその動きに合わせるように声を上げる。アキはその声を聞きながら、彼女の感じるポイントを探ることにした。指は自然に彼女自身のクレバスの隠れたポイントに集中した。彼女は甘えるような声に変わっている。アキはあるポイントゆっくりと指で転がす。一段とメイの声が大きくなる。アキはその感覚を楽しみながら、また子供のように乳首を口で吸いながら、舌で転がした。メイの腕は、アキの肩の後ろで組まれ、絶え間なく動いている。やがて、メイは絶頂を迎えた…アキは、そっとメイの細い体を抱き寄せた。柔らかいその肌、濡れた髪が胸に当たり冷たい。体の芯がまだ火照っている。アキの下半身は、まだメイを求めていた。そして、またメイの体もアキを求めていた。その体の内側で燃える炎のようなものが渦巻いているのをアキとメイは、それぞれに感じていた。真っ赤な炎…それは、暗闇の中であっても確実にそこに存在した。二人は、そのお互いの炎を感じたのか、抱き合ううちに、キスを始めた。アキの唇を、メイが吸い、メイの唇をアキが軽く挟んだ。メイの舌は、すでにアキを惑わして、ゆっくり絡めたかと思うと、また初めてのキスの様にアキの舌を拒んだ。アキはその余裕に驚く。アキは、ベッドで彼女をもっと抱きたいと思った。メイの本当の姿をこの目で確かめながら。メイの唇から離れると「ちゅっ…」と音がした。「ベッドへ行こう…」メイが口を開いた。その声は明らかに歌っているメイとは違い、一人の女が、目の前の一人の男を求めていた。アキは、メイをもう一度抱きしめ、手を引きシャワー室を出た。
照明のスイッチを入れると、メイの体が浮かび上がる。橙色の明かりに浮ぶ体は、影をしっかりと刻み、彼女の体の起伏を際立たせる。右の胸は明かりに照らされ、その柔らかな膨らみをはっきりと示す。左の胸は、暗い影になった。アキは、タオルを手に取りメイの体を拭き取る。そのタオル越しに感じるメイの柔らかい感触に、アキのモノは、ゆっくりと立ち上がっていく。心臓の鼓動に合わせるように段段と…メイは、体をアキに任せながら、手でアキのそれを弄んでいた。ベッドに二人横になる。今朝、吸ったセブンスターの吸殻がある。捻じ曲がったその形は、今朝の憂鬱を示していた。白いシーツの中で、メイは壁に向かい横になっていた。アキは、その姿を見てまた抱きたくなるのを堪え、セブンスターにまた火を着ける。薄紫色の煙がまっすぐ白い天井に上っていく。アキはそれを見つめた。「メイは俺のことをどう思っているんだ?」今日、楽器店で出会い、歌っているメイを見つけ、居酒屋で食事をして、メイが泣き出して 今こうして隣に裸で横たわっている。こんなにそばにいるのに、メイの心は全く見えない。居酒屋での彼女の時折見せる悲しげな顔が、アキの心を落ち着ゥないものにした。メイは何かを背負い、何かに涙を流し、アキの体を求めた。その儚げで、今にも消えそうなメイの瞳を思うと、アキはメイを守りたい気持ちでいっぱいになる。腰のくびれをわずかに揺らしメイは壁に向かいゆっくりと息をしていた。アキは、一瞬照明を消そうか迷ったが、そのままにすることにした。メイの体をこの目に焼き付け、メイの存在を感じたかった。アキはメイの肩を引き寄せ、ゆっくりと腰にキスをした。メイは、驚いたように、体をびくっとして、腰をよじらせた。蛍光灯の照明には、メイの体はあまりにも白く見えた。アキは体をこちら側に見せる彼女の胸の谷間にある薄く青い血管を見つける。その透き通った青に彼女の儚さを見た。