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ヒッチハイク

Last Modified : Sat, January 06 22:03:01 2018 RSS Feed

2001-05-30 / ヒッチハイク

2年か3年前の夏休み頃のお話。

私は、その時国道36号線を札幌から千歳市に向かっていた。車は Prelude 。歩道に目をやると「苫小牧」と黒いマジックで書かれた画用紙を頭の上に掲げている若い男が二人。一人は、こちらの車線に向けて親指を立てている。ヒッチハイクらしい。普段なら、男2人だし、乗せた途端に「金出せ!」なんてやられたらたまらない、物騒だとそのまま通りすぎるところだったけれど、何故かその時は気分が良かったのか、気まぐれだったのかブレーキを踏み彼らの前に停車した。

二人は飛び跳ねて喜び、頭を下げながら私の車に近づいてきた。私は運転席から助手席のウィンドウを開けると二人は「乗せてくださるのですか!?」と張り詰めた声で言う。「ああ。早く荷物積みなさい。後ろの車にも邪魔だし。」

二人は、興奮した様子で私に話し掛ける。初めて停まってくれた車であること。北海道大学生であること。九州と名古屋の出身であること。車内は急に大学生達の汗の匂いに包まれた。私はエアコンの温度を下げた。

「苫小牧市までは無理だけど、千歳市まででいいかな?」彼らに質問する。
「はい!千歳まででも十分です!」元気よく答える。
「 OK! 」

車は、彼らが話しをする間に千歳市に着く。降りるときに彼らは、小さなインスタントカメラを取り出した。「乗せていただいた方の写真を撮らせてもらおうかと思っているんです。」僕は写真は苦手だったが、彼らに押し切られ車外に。一人がシャッターを切り、私のはにかんだ顔を撮影した。

一人が、綿密にこれまでの経過をノートにメモしている。彼らの礼に、「いいよ、いいよ」とお経のように応えながら、僕は車に戻った。発進させ、ふとルームミラーを見るとまだ彼らはこちらに向い頭を下げていた。彼らの汗の匂いが残る車で僕は仕事に戻った。

北海道大学は、東京以北でも有数のエリートが集まる大学だ。彼らも、もしかしたら高級国家公務員になっているかも知れないし、一流企業に就職しているかもしれない。

あの暑い夏の日の、僕のはにかんだ顔の写真は、何処にあるのだろう。

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