2001-07-09 / おいしいね

私は、味覚に関してかなり鈍感である。普段食べるものも、あまり興味がないし特別好きなものもないし、特別嫌いなものもない。これは、ちょっとした問題だ。

昔の彼女に、慣れない手で、一所懸命に作ってくれた料理を、食べていた時のことである。彼女は、食べ終わった後に、私をじーっと見つめていた。

「美味しかった？」

彼女は、私に聞いた。そう、私は、彼女の料理に対して何の感想も述べていなかったのだ。確かに、彼女の料理は、とても美味しいというレベルに達していなかったけれど、愛情もこもっていたし、素朴な味のする料理であった。

「美味しかったよ」

そう答えたところで、彼女は喜ばなかった。すでに時遅しである。言葉には、タイミングが必要だ。タイミングを誤れば、感謝の言葉や賛辞の言葉も意味を持たないだけでなく、否定的な言葉にさえなってしまうのだ。

それ以来、私は、彼女の作った料理に関して素直に感想を述べることにしたのだ。タイミングを外さないように。

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