2001-08-29 / 日本人形

その日本人形には、不思議な力があった。女の子の人形。黒くまっすぐな髪に赤い着物。彼の家は、その日本人形を暗い部屋に飾っていた。奥には、裸電球の点いた台所がある。暗い部屋の隣で、僕は日本人形のことを考えていた。あの人形の形相は普通じゃない。人を恐がらせる何かがある。ふと、無言で彼は人形を掲げ、その髪をはさみでカットし、さらに着物の部分も切り刻み僕に握らせた。僕はそれを受け取ると、これまで感じたことがない恐怖を覚えた。何が起こるんだ。僕は、その部屋から逃げだした。こんな部屋にはもういたくなかった。人形から離れたかったのだ。

ふと、ポケットに手を入れると、人形が手をつかんだ。目の前に掲げると、ふとその人形が微笑んだ。

「地獄に落ちろ」

人形はそう口にした。

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