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白昼の殺意

Last Modified : Sat, January 06 22:02:42 2018 RSS Feed

2002-04-03 / 白昼の殺意

後日付記 : この日の日記は、性的に不適切な内容を含みますので、嫌悪感を覚える可能性のある方は、読み飛ばしてください。

今日の仕事中の昼は、時間があまりなかったので、マクドナルドで済ませることにした。

僕の会社のすぐ近くにあるマクドナルドは、キッズコーナがあり子供たちを遊ばせることができるので、近所の若い主婦たちがお昼になると沢山いるのである。その子供たちと、井戸端会議中の彼女らの中をくぐり抜けて、カウンターまで行くのは結構疲れる。足元の子供たちと、話に夢中な女性たちを縫うようにして歩く。

やっと、着いたカウンターに並んだ僕は、子供の手を引いた若い奥様の後ろに立つことになった。子供は、落ち着かず手を離したがっている。お母さんは、手をしっかり握りしめている。しかし、子供は逃げようと必死になる。最初は、遊んでいる様子だったが、男の子は意地になったのか、無理に手をほどいてしまう。すると、メニューを遠目に見て品定めしている僕に正面衝突してしまった。男の子の鼻水が、僕のスーツにべっとりと付いてしまう。若い奥さんは、男の子の手をつかむと、ひどく彼を叱った。

「なんでじっとしていないの!! おじさんに謝りなさい」

僕は、おじさんと言われただけで、鬱になったので、なんとなくどうでもよくなっていた。

しかし、彼は謝ろうとしなかった。多分、何が悪いのかがわからないのだろう。だからと言って、僕のスーツの鼻水は消えなかったし、彼は謝るわけではなかった。

僕は、まずスーツを脱ぎ、ティッシュペーパーで拭き取ることにした。彼女は、僕に向かって謝っていたが、なぜだか遠くの声のような気がした。僕は彼女が言った言葉を意識して聞くように、ゆっくりと彼女を見た。

可愛い。

「いいですよ。気にしないでください」

「本当に申し訳ありませんでした」

「そんなにすまないと思うなら、クリーニング代をください。それですっきりするでしょう」

僕が、そんなことを言いたくなるほど、彼女は丁重に謝り続けた。彼女は、本当にすまないと思っているのだろう。子供の頭を無理やり押し下げて謝らせた。でも、僕はもう、鼻水を拭き取り終わっていたし、取り留めて怒っているわけではなかった。誰だって子供の頃は遊びたがるし、無茶もする。そうして大人になっていくのだ。

「わかりました。これで、いいですか?」

彼女は、財布から千円札を取り出し、僕に手渡そうとした。僕は、なんとなく彼女に意地悪をしたくなった。

「いや、お金はいいよ。貴女と少し一緒にいたいな」

「え?」彼女は、ひどく驚いた。それはそうだろう。マクドナルドのレジカウンターの前で、自分の子供がぶつかった見知らぬ男に、お詫びにデートに誘われたのだ。そんな滑稽な話があるだろうか。

「わかりました」

「え?」

今度は、僕が驚く。僕は、ただ意地悪をして、それで終わりのつもりだったのだ。「冗談、冗談、今度から気をつけようね、僕」と言って、お仕舞いにしようと思っていたのだ。そういうシナリオだったのだ。

「それじゃ、ここじゃなんだから、外へ行きましょう」

とりあえず、彼女の知っている若い奥さんもいるだろうし、マクドナルドは出たほうがいい気がした。

先ほどまで、全くの見知らぬ他人同士だった二人は、マクドナルドを出ると、車に向かった。彼女の車だ。ホンダのステップワゴンだった。旦那の車だろう。これで、家族で遠出もしたりするのかもしれない。先ほどの男の子だって、お父さんに甘えたり、お母さんに甘えたりしている休日があるのかもしれない。でも、今日は、見知らぬ男と自分の母親が、目の前にいた。自分のお父さんより、背が高かった。

「私の車でいいですか?」

「問題ないよ」

問題あるはずがない。彼女のようなキュートな女性とデートができるなら、僕は戦車にだって乗っただろう。彼女は、その華奢な手で車のキーを開けると、僕を後部座席へ誘導した。子供も一緒に、三人で後部座席に座った。後部座席と言っても、子供のためか、フラットシートになっていて、ベッドのようになっていた。そこには、後部座席で子供が退屈しないように、ビデオデッキの内蔵した小型のテレビまであった。その前には、白雪姫のビデオが無造作に置かれていた。

彼女は、子供を助手席に座らせると、頭を撫でながら言った。

「これから、お母さんとこの人と体操をするから、大人しく待っててね」

そういうと彼女は、服を脱ぎ始めた。僕は、戸惑った。僕は、そんなことを要求していない。ほんの冗談だったんだ。

彼女は、裸になるとフラットシートの上に横になった。目を瞑っているのが、痛い痛しい。僕は、急に犯罪者になった気分になった。彼女は、被害者だ。脅迫された上に、婦女暴行をされる被害者。

彼女は、僕の手を引き、僕は、彼女に覆いかぶさってしまった。

すると、後首部に鈍い痛みが走った。

「うっ」

僕は、その鈍い痛みを我慢できずに、首を押さえながら、彼女の横に、倒れた。視界に工具箱が入る。彼女の子、男の子が、金槌やら、ペンチやらを持っている。恐らく、彼は僕を何かで、力いっぱい殴ったんだろう。赤い工具箱が、徐々に黒くなっていく。いや、視界が暗くなっていく。

僕は、消えゆく意識の中で、彼女の言葉を聞いた。

「ざまあみろ」

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