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Lunatic Moon 7
Last Modified : Sat, January 06 22:02:39 2018
2002-06-12 / Lunatic Moon 7
僕は、腰のあたりに彼女を感じながら、天井を眺めていた。天井は相変わらず暗闇だ。僕は彼女の舌で包まれてる自分自身が、鼓動を打っているのを感じている。
「ねぇ、こういうのはやっぱりよくない」
「なぜ? よくないの?」
「いや、すごく気持ちがいいよ。でもね、君は、多分どこかで"仕事"をしているような気がするよ」
「…」
「月を見ようよ」
「月? なぜ貴方は月の話ばかりするの?」
僕は、彼女から離れるように座りなおした。暗闇の中で彼女は、どういう顔をしているのかわからない。多分呆れているんだろう。僕は、トランクスとバスローブを整えて立ち上がり、窓を開ける。白い壁紙の観音開きの扉を開けると、遮光カーテンがある。遮光カーテンを開けると、そこは白と暗闇の二つしかない世界だった。駐車場に照明はなく、月の光だけで照らされていた。ふと、足元を見ると青い絨毯が、月の光で白く照らされてることに気が付く。それは、太陽の明るさとは違う、優しさに溢れた光だった。彼女は、僕の隣に立ち、空をひとまわりみて、そして月を見た。彼女の顔も月の光に明るく照らされた。先ほどまでの仕事として、僕と寝ている彼女とは違った。
「明るいのね。こんな明るい月を見たのって初めて」
「僕もだよ。こんな山奥だから遮るものもないからかな」
「そうね。なんか私、やっぱり貴方と仕事の延長として寝ていたのかも知れない気がする」
「なぜ、僕となんか寝るんだい?」
「多分、誰かに触れていたかったんだと思う。ねぇ、なぜ人は人と触れたがるんだろうね?」
「自分を感じたいからじゃないかな。人に触れていると感じるのは、結局自分じゃないかと思うんだ。勿論相手も感じている。でも触ってる感覚があるのは、自分だけさ。そうして、自分を感じることができる。なんとなく言いたいことはわかるかい?」
「うん、わかるわ。でもね、触れている感覚を共感するという考え方もできるんじゃない? 貴方に触っている私、私に触れてる貴方。お互いに感じている」
「そうだね。僕は自己中心なのかもしれないな」
「ねぇ、私ね、貴方に抱かれたいの。とても。貴方はのほほんとしているけど、触れていたい人」
「そうか」
月は、二人を青白く照らす。その光は彼女を優しくさせたのだ。
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