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やおいってみる

Last Modified : Sat, January 06 22:02:35 2018 RSS Feed

2002-08-28 / やおいってみる

あの人に会ったのは、僕が中学 1 年生の春。ずっとクラスは別だったんだけど、三年生になった時にクラスが一緒になって、夏休みの進学希望者の補習の時のこと。外はセミが鳴くのが聞こえて、遠くでは野球部の金属バットの音と掛け声。二人きりで勉強をしていた僕に、彼は質問してきた。

「ねぇ、この単語って意味なんだっけ? 」

「うん? 」

教室は誰もいないから、彼の声は少し響いて、僕はノートから目を上げると彼を見た。英語の教科書を指さして僕に問いかけている。僕は、なんとなく上の空で、数学の公式を頭の中に浮かべていたから、彼の質問を耳に入れて、脳の中で噛み砕くのに少し時間がかかっていた。怪訝な顔で、僕の顔を覗き込んだその顔を見て、僕はなぜか少し「ドキッ」とした。ストレートで綺麗な髪。髪は、窓から垂れ下がっているベージュ色のカーテンをすり抜ける太陽の光に、少し当たって、金色に輝いている。前髪が、少し目の上にかかって、彼はゆっくりと髪を耳にかけた。そのしぐさを眺めながら、教科書に目を移す。

fascination

僕の好きなアーティストの曲に使われている単語だった。

「魅惑って意味さ」

「そうか。ありがとう」

彼は礼を言うと、僕を見た。そして、反対の髪も、またかきあげた。

「ねぇ、ジュン。僕はキミのことが好きなのかもしれない」

「なっ、何言ってんだよ!!」

僕は、必要以上に慌てた。顔が少し火照って赤くなっているのがわかる。シャープペンシルが、汗で滑った。

「カキーン」

金属バットで、軟式のボールを打つ音が聞こえた。そして、またセミの音が耳に、耳鳴りのように聞こえてくる。それは、木にとまっているのではなくて、僕の頭の中にいるのではないかと思うほどに、常に鳴り止まずに聞こえ続けた。

「ジュンのことを考えると、僕、なんだかおかしくなってしまうんだよ」

「う。うん」

なんとなく、その場所にいられなくなって、僕は数学の公式を頭に抱えたまま席を立って、窓の方に向かった。時折吹く風に、カーテンは揺れている。その度に、カーテンの留め金は、キリキリと鳴いた。カーテンが、少し宙を舞った隙に、僕はカーテンを窓の隙間に入った。窓の下には、濃緑の芝生と黒くてキラキラ光った池がある。僕は、太陽を反射しているその池の水面を眺めていた。そして、そこに浮かぶ蓮の葉の上にいるカエルを思った。カエルは、勿論いない。恐らく池の中で雨を待っているだろう。雨は、彼にとって必要不可欠な存在なのだ。眩しい太陽は似合わない。

「ねぇ」

カーテンの向こうから彼の声が聞こえた。そして、歩く音。乾燥した教室。風でノートはめくられる。誰もいない教室の机の上で。

「あっ」

僕は、抱きしめられていた。彼に強い力で。カーテンは僕を覆い、留め金は僕の上でキリキリ鳴いていた。太陽を背中にした僕の影がカーテンに、黒く映っている。僕の姿は、カーテンの波打つしわと同じに歪んでいた。そして、歪んだ感情に抱かれていた。

「好きなんだ」

カーテンに包まれた僕を、少しずつ剥ぎ取りながら彼はつぶやいた。真っ赤な顔が見えたその瞬間、僕は、彼を許そうと思った。たった一人で、許されない感情を自分の中で打ち付けていた彼を思うと、どこかに僕と同じ姿を見たのかもしれない。それが、どんな感情なのかは、まだ理解できていないだろうけど、多分僕は、彼と同じことを思っている。

彼が好きなんだ。

「うん」

僕は、抱き寄せる彼に身体を任せて、彼の肩に顔をのせて彼の髪と耳を見た。白い制服のワイシャツからは、ほのかに彼の汗の匂いがした。そして、彼の唇に僕の唇を重ねた。目を閉じている彼を見て僕は、かわいいと思った。

抱き合いながら、彼の黒い学生ズボンの下に固いものを感じたのは、キスが終わって離れた時だった。そして、僕自身も固くなっていることに、気がついた。

やっぱ、こういうのは無理ぽ(w

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