Web Café Weblog

Web Café Weblog - Archive

返ってきたメール

Last Modified : Sat, January 06 22:01:46 2018 RSS Feed

2005-05-29 / 返ってきたメール

彼女と初めて会ったのは、新宿駅の構内だった。待ち合わせは、仕事が終わってからだった。約束を少し過ぎていたのを、彼女はメールで詫びていた。でも、僕は、全くそれを責めていなかった。お互い仕事の後だし、約束を無理にとったのは僕の方だった。

いつだったか、僕が毎度の東京出張で、週末を利用したオフに彼女にも来て欲しくて、お誘いのメールをした。「今度東京行くので、よかったらみんなで遊びませんか? 」

彼女のサイトを前から、見ていたし札幌から東京に越した感じも聞きたかった。東京で暮らすことって、札幌で暮らすこととどう違うのだろう? 勿論、彼女自身にも興味があった。どんな人だろう。

メールの返事は、一般的に言えばまあ、断られてるなと思う文面だったと思う。ちょっと仕事が忙しいです。あまり期待しないで下さい。またメールします。

でも、直前に、メールが来て、電話番号と携帯のメールアドレスを交換した。ただ、みんなとは違う日に二人で会うことができるということだった。そう、彼女は人見知りしちゃうので、最初は会えないとメールをくれたのだ。だから、二人きりなら会えると。

新宿駅で、僕の目の前に現れた彼女は、髪がさらさらに長くて、足も手もとても細くて、でも目がすごく大きくて、綺麗な目をしている女性だった。歳は、僕とあまり変わらないと思うけれど、わからない。人に会うのが、ちょっと苦手なんだよね。お店を何も手配していない僕と、新宿には滅多に飲みに来ない彼女で、途方に暮れたけれど、とりあえず目についた居酒屋に入り、彼女と一緒にビールを注文した。

「ねえねえ、ジュンたそってこんなんだけど、どう思った? 第一印象」

「うーんとね、私が好きだった人に似すぎていて、初めて会った時びっくりしたよ!! かっこいいじゃん」

笑いながら、彼女は言う。どこまでが本当かどうかは、わからないけど、悪い気はしない。僕も、素直に綺麗な人でよかったなんて言ったりした。オフ会ってのは、どんな人が現れるかわからないものだから。

仕事の話や、ネットの話をしながら、飲む。もう随分前だから、僕も記憶が曖昧だけれど、とぎれることなく会話していたと思う。僕は、どっちかというと話し好きだし、折角会えたこの機会を、彼女にも楽しんでもらえたらと思った。そして、彼女は僕と同じペースでビールを飲んだ。女性にしては、早い。

二件目に場所を移して、カクテルを飲ませるような店に入った。店の名前はもう覚えていないけれど、暗くて個室っぽくレイアウトされた大人っぽい店だったと思う。僕は大好きなモスコミュールを相変わらず飲み、彼女は柑橘系のカクテルを僕と同じペースで飲んだ。

「 お酒 強すぎだから !」

「 えー、 そっかなあ 」

明るく言う。 彼女は顔が少し赤くなって、楽しそうだった。

札幌に戻ってきた僕と東京に住む彼女は、携帯電話のメールをやりとりするようになった。彼女は、すでに一人の人じゃなかったし、僕も彼女は魅力的だとは思ったけれど、好いたとかどうとか、それ以上のことはやりとりしなかった。日常の話や、Excel の話なんかをした。僕が、彼女のメールでよく覚えているのが、「ねえねえ何で禁煙するの? 」ってメールだった。禁煙は、僕にとってはわりと理由みたいなものがなかったので、「これっていうのはないけれど、周りに迷惑かけなくなっていいよ」と返答した。でも、彼女はそういう答えを求めていたようではなく、「健康になった?」と質問してきた。「体の調子はいいよ」

彼女は、夜更かしの人で、週末になるとメッセンジャーでも朝までオンラインになっていた。僕もわりと週末は夜更かしするので、たまにお話した。例えば、掃除が苦手なことや、バイクに乗ってツーリングした話。でも、ほとんど彼女は酔っていた。よく僕は、飲み過ぎている彼女を注意した。絶対身体をこわすよと。そんな話だけれど、楽しかった。mixi が始まったばかりの頃、彼女を誘った。そして、強制的に紹介文を書くように言った。彼女は、「えー、いいよー」などと言いながら、ちゃんと書いてくれていた。

私を優しく叱ってくれる細身で素敵なお兄さん。

そして、よく彼女は泣いた。

彼女の泣いてしまう原因の一つは、僕もメッセンジャーで聞いたけれど、ここで公開することではないし、おそらく彼女も望んでいないと思うので、伏せる。

そんなやりとりも、彼女が入院してからは、めっきり減ってしまった。彼女の日記の文面からはおそらく実家のある札幌に来ているようだったので、僕はお見舞いに行きたい旨のメールを送った。一度送って返信がなく、もう一度。でも、結局メールは来なかった。

そして、昨日、犬神から聞いた。

yukiakari.netのドメインを管理していた真冬さんが逝去されました。

僕は、最初何のことかわからなかった。信じられるわけがなかった。あんなに楽しく遊んだり、メールで馬鹿なことをやりとりしたのに。今でも信じられない。

昨夜、僕は彼女の携帯電話にメールを送ってみた。

本当に信じられないけれど、天国でも楽しくお酒を飲んでね。飲み過ぎたらだめだよ。

しばらくしてメールが返ってきた。宛先不明で。

さようなら、真冬さん。僕は、あなたに何もしてあげることもできなかった。そして、僕はあなたと出会えてよかったと思っています。たくさんありがとうね。

コメントする

コメントの投稿

Trackback Data

この記事に対する Trackback
https://web-cafe.biz/~prelude/diary/mt-tb.cgi/1421
この記事のリンク先
"返ってきたメール" @Web Café Weblog

↑Top

Powered by Movable Type Pro Copyright © 2000-2018 Web Café Prelude All Right Reserved.