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陰陽座 「魑魅魍魎」レビュー

Last Modified : Sat, January 06 22:01:39 2018 RSS Feed

2009-02-22 / 陰陽座 「魑魅魍魎」レビュー

陰陽座の2008年9月10日発売の通算8枚目のアルバム「魑魅魍魎」が発売されてから、もうそんなに経っているのか。昨年のことだったんだと、ちょっぴり忙しい昨今を思い返したりするわけだけれど、毎回のことながら本アルバムもレビューしてみようかと思う。

本作は、前作「魔王戴天」(まおうたいてん)を継承し進化したアルバムだ。ヘビーな音と共に彼らの持ち味である和のエッセンスを高い次元で昇華させた逸品となっている。黒猫と瞬火は、そのヴォーカルにさら磨きをかけてきた。黒猫は、インディーズ時代から一級のヴォーカルを聴かせてくれていたが、瞬火はコーラスでは高いところまで声が出るし、ツインヴォーカルとしての陰陽座の側面を語る上では欠かせない存在となっている。ギターの二人も初期とは比べものにならないほどに腕を上げてきた。それぞれの持ち味をそれぞれのギターで聴かせてくれる。ベースは、もともと安定していたバンドではあるが、ヴォーカル兼任でありながらドラムの斗羅とずっしりとしたベースを聴かせながら、アッピールポイントではしっかり前に出ている。2006年に復活した筋肉少女帯での活躍も記憶に新しいドラムの斗羅については、器用に(変拍子もこなしながら)本作品でも安定的なドラムを聴かせてくれる。彼は、ヘビーメタルだけ叩いていなかったサポートドラマーの血があるのか、どんな曲でもこなして叩いてくれるテクニシャンだ。

さて、各楽曲を聴いていこう。

1. 酒呑童子(しゅてんどうじ)

作詞:瞬火・作曲:瞬火。有名な妖怪酒呑童子を1曲目に持ってきた。不気味なギターから始まるヘビーなギターとスローテンポで展開する曲。この曲をスタートに持ってきたのも、一種のいい意味での裏切りなのだろう。ヘビーでダークにこのアルバムは始まりを告げる。そして唐突に曲が終わり次の「蘭」へ繋がる。

2. 蘭(あららぎ)

作詞:瞬火・作曲:瞬火。蘭とは、森蘭丸のことを指すのか。前曲から繋がったイントロで展開されるスタンダードなロックチューン。

3. がしゃ髑髏

作詞:瞬火・作曲:瞬火。がしゃどくろと読む。がしゃどくろは妖怪の名。ゴリゴリのベース音が印象的なサウンド。このように瞬火はヴォーカルでのレベルも年々上がってきて素晴らしい歌を聴かせてくれるが、ベーシストとしての仕事もきっちりやってのける。ベースの音は地味なので、目立ちたい輩には向かないけれど、それでも彼は仕事をすべきところはちゃんと表に出てきていい音を聴かせてくれるのである。

4. 野衾忍法帖(むささびにんぽうちょう)

作詞:瞬火・作曲:瞬火。ノリノリ(死語)のサウンド。忍法帖シリーズは毎度アルバムに収録されているが、この曲はギターリフが印象的な曲で、黒猫も楽しそうに歌っている。瞬火は元ギターリストであるので、このようにギターで聴かせるような曲も作曲する。

5. 紅葉

作詞:瞬火・作曲:瞬火。アルバムから抜粋され先行発売されたシングル曲。レビュー済み。

6. 青坊主(あおぼうず)

作詞:瞬火・作曲:瞬火。青坊主は、妖怪の名。スローな曲だが展開が二転三転してなかなか味わい深い。伸びやかに瞬火が歌う声の通りが、初期の頃と変わったなあと思う。いい意味で。

7. 魃(ひでりがみ)

作詞:瞬火・作曲:瞬火。ひでりがみとは妖怪の名。一転テンポアップ。この曲はサビだよね。萌えてとか超えてとかリフレインがこだまする(謎)。

8. しょうけら

作詞:瞬火・作曲:瞬火。しょうけらとは妖怪の名。瞬火が、ちょっととぼけた感じで歌うのがいい感じ。ベースソロありギターソロあり、かけあいありなので、ライブでは盛り上がったのではないだろうか。

9. 鬼一口(おにひとくち)

作詞:瞬火・作曲:瞬火。鬼ひとくちとは、鬼が一口で人間を食べてしまうような様子のこと。ヘビーかつスピードチューン。中間は展開が変わり黒猫が艶やかに歌うが、サビの瞬火パートや弟のうどん王子こと招鬼のデスボイスの掛け合いなどで恐ろしい鬼の様子を歌う曲。この曲はたぶんライブなどで盛り上がりそうな曲である。頭振る的な意味で。

10. 道成寺蛇ノ獄(どうじょうじくちなわのごく)

作詞:瞬火・作曲:瞬火。安珍と清姫の伝説あるいは説話をモチーフにした曲。11分を超える大曲。これまでの陰陽座であれば組曲級である。清姫の恐ろしいまでの想いを黒猫が歌い、安珍を瞬火が歌う。このような作品を作り上げるのが陰陽座の醍醐味である。伝説に沿った瞬火なりの解釈の歌詞とドラマティックな曲で、このアルバムのクライマックスを迎える。

11. 鎮魂の歌(たましずめのうた)

作詞:黒猫・作曲:黒猫。黒猫らしい優しいメロディの美しいバラード。道成寺の後にこの曲が来るのもあるいは、深い意味があるのかも知れない。

12. にょろにょろ

にょろにょろとは、愛媛県の幼児語で「お化け」という意味の言葉。と検索すると出てくるが、確証はない。曲名の変な語呂からすると変な曲なのかなと思いがちだが、普通のポップサウンドな曲。陰陽座は、いつもアルバムの最後の曲は、ポップな曲や、故郷の愛媛県の方言の曲を収録している。まあ、僕はヘビーメタル一辺倒ではない人種なので、こんな曲もありかなあとは思うけれど、まああんまり好きじゃないという人もいるということは理解できる。

全体に引き締まったサウンドと、聴き応えのある楽曲が12曲収録された本作品は、ファンなら勿論購入するべきだろうが、まずは聴いてみたい入門編としてもいいんではないだろうか。

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