2001-08-21 / 松

僕の高校には、大きな松の木があります。その松は、天然記念物かなんかで随分有名らしいんだ。でも、年代もかなり経っていて、根は腐っているし、根元もほとんど虫に喰われているし、葉もほとんどない。でも、この松はもっと有名になるんだ。ソリマチとナナコの二人が、ここを舞台にドラマの撮影をしているから。ついに、うちの高校にある松が全国区になるんだ。田舎の僕らは、ソリマチとナナコが来るってだけで、町をあげての大騒ぎ。みんな、テレビのドラマの題名のまんじゅうやら、何やらを作りはじめた。撮影も僕らの授業中にすることもあって、窓側の席に座っている奴なんて、全然授業を聞いてなくて、先生でさえ、ちらちらナナコや、ソリマチを見る始末。女子がソリマチを見て「かっこいい！」なんて黄色い声出していると、なんとなくつまんない気がした。別に、僕は女子から人気があるわけじゃないけどね。

僕は、授業にも、ナナコにもソリマチにも興味がなかった。でも、なんとなくみんなが浮かれているから、僕もつられて浮かれてた。ちょうど今の季節は、教室の戸は開いていて名簿で名前が呼ばれた後に、僕はこっそり教室を出た。屋上に行ってタバコでも吸おう。外は、今にも雨が降りそうな空だ。

そんなこんなで、放課後になると自然にみんな、撮影の終わった大きな松の木の下に集まった。僕も、松の木を見に来た。誰かが、「おい！松の木を倒そうぜ！」なんて言いだした。なんとなく、僕も賛成したい気持ちになった。こいつを倒せば、全てが台無しになる。何人かの男子は、もう松の木を押している。最初に説明したけど、この松の木の根元は腐っているから、少し土をほじくって、みんなで押せば倒せそうな気がする。みんなで無言で押してみた。

メリメリ！バキバキ！絵に描いたような音をたてて松の木は倒れた。

押していた男子は、みんなで「やったな！」とか、言いながら一仕事終えた顔をしている。補習していた奴らが、みんなで教室から身を乗り出して、見ている。先生達が、こっちに向かって走ってきた。そろそろ逃げないとヤバそうだ。

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