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Lunatic Moon 2
Last Modified : Sat, January 06 22:02:40 2018
2002-06-07 / Lunatic Moon 2
湖を抜けると、モーテル街に差し掛かる。
「ねぇ、そこが家なの。入って」
「え! ここって?」
僕は戸惑いながら、車を左折させた。彼女は、笑いもせず驚きもせず、前を見ていた。前にある何かを見ているのではなく、目の前の空間を見るような瞳をしている。彼女を見ていると、なんだか自分自身が、何か違う世界に存在する気がする。月と湖と不思議な少女がいる世界。世界の誰にも会わない。世界は、月に照らされ、全てが白く照らされるか、暗黒の闇。
駐車場に車を停めると、彼女は器用に胸を隠しながら車を降りた。大きなスーツは足元で引っかかる。埃っぽいコンクリートで裾は、白くなっている。あぁ、またクリーニング屋に逆戻りだ。仕方ない。月のまやかしなのだ。銀色のアルミ製のドアを開けると、彼女は先にモーテルに入って行く。床も壁も、赤紫に統一されていた。彼女は、入り口に用意された部屋を選ぶパネルを見て、迷うこともなくひとつの鍵を抜き取った。そして、鍵を片手に持ちながら、また奥へと進み始める。深夜のモーテルは、小さな音でクラッシックが流れている。そして、部屋の番号と、カギの番号を確認して、彼女はドアのカギを開けた。
部屋の中は、青い絨毯に白い壁紙であり、奥には広いベッドがある。ベッドの左側にはドアがあり、恐らくバスルームであろう。ベッドの上の枕には、橙色の光が当たっていた。光は、ふたつの枕を均等に照らしている。
「ここがおうちかい? お姫さま」
「そう。私は帰る家がないのよ」
「逃げ出したお姫さま。ですか」
「ねぇ、お風呂に入りましょう」
「先に入っておいで。僕はテレビでも見てるさ」
「ねぇ。一緒に入りましょう」
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