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Lunatic Moon 4
Last Modified : Sat, January 06 22:02:40 2018
2002-06-09 / Lunatic Moon 4
部屋の冷蔵庫から、缶ビールを取り出しベッドに腰掛けながら飲むことにする。銀色の缶が、バスルームから漏れた明かりで輝いた。タバコに火をつけると、深く吸い込んだ。ビールを一口飲む。苦い味が舌から、喉、胃へと移動する。冷たさが残る感じだ。天井のスピーカからは、バッハの「主よ。人の望みの喜びよ」が静かに流れている。薄明るい、あるいは薄暗いこの部屋で、僕は何をしているのだろう。
ベッドの隣が急に明るくなり、彼女が出てきた。バスルームの電球を背にして、彼女のシルエットだけが、黒く動く。バスローブを着て、髪の水分をふき取りながら、出てくる。僕は彼女を眩しそうな視線で眺めている。タバコを最後に一口吸い、枕元の吸殻いれに擦り付ける。紫色の煙が最後に立ち昇る。赤い火種が、吸殻いれの中で、黒い灰になった。
「おかえり」黒い影に言う。
「ただいま」黒い影が答えた。
枕元のデジタル時計を見ると午前 2 時 16 分を示していた。時間を確認すると、僕は急に横になりたくなった。ガサガサに乾燥したシーツの中に潜り込むことにする。白いシーツは、洗濯糊の匂いと、彼女のシャンプーの香りがした。彼女がドアを閉めると、部屋はまたもとの暗さに戻った。間接照明は、僕の頭を照らし、彼女の白いバスローブを照らした。
「さすがに眠くなってきたよ、裸のお姫さまもさらったことだしね」
「そうね。私も疲れた」
「眠ろうよ」
「そうね」
僕は、窓に近い側に横になり、彼女は、バスルームの入り口の方に横になった。背中を向ける彼女。僕は、その背中を見ながら、枕元の照明のスイッチを切った。
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