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bakery 3
Last Modified : Sat, January 06 22:02:36 2018
2002-07-27 / bakery 3
いつものように、僕はパン屋で働いていた。パンはいつもと同じように美味しそうな香りだったし、僕もいつもの通り学校を終えて店に来ていた。何も変わりない。いつもの日常だ。
そして、彼女と男の子もいつものように、店に来た。店の中でいつものように会話しながらパンを選び、レジに並んだ。
「いらっしゃいませ」
「こんにちは。突然なんだけど、私の家が引っ越すことになったの」
「そうなんですか」
「でも、この辺りで引っ越すので、またこの店には来れるわよ」
「はい」僕は嬉しそうに返事をした。それは、仕事としての笑顔なのか、本心からの笑顔なのかはわからない。
「それで、お兄さんって一人暮らしなのかしら?」
「はい。一人ですよ」
「そう。引っ越しの時ににね、どうしてもやっぱり使わなくなってしまったものがあるじゃない? そういうのでよければ差し上げたいの」
「本当ですか!? 喜んでいただきます」
「そう。よかったわ。それじゃ、私の車で持って行くことにするわ。お兄さんの家の住所を教えて」
僕は、先週のチラシの裏を使ったメモ用紙に住所を走り書きした。迷った時のために自宅の電話番号も記しておいた。
「都合がよいのはいつかしら?」
「僕は受け取る側ですから、都合は合わせます」
「そう。そしたら明日の夜 8 時は開いてる?」
「はい。大丈夫です」
そして、彼女はいつもどおり男の子と一緒に帰った。そして僕もまたいつもの通り、焼きたてのパンを並べることにした。
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