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bakery 8

Last Modified : Sat, January 06 22:02:36 2018 RSS Feed

2002-08-01 / bakery 8

メイと男の子が、玄関に出てきてくれた。マンションは、新築で広く壁紙はまだ白くて、接着剤の匂いが少しする。男の子は、僕の手を引き遊びに誘う。リビングルームの中ほどにある大きな 25 型のテレビの前のソファーに座らせると、テレビ台の下にしまってあったゲーム機を取り出すと、僕と一緒に車のゲームをしようと言う。よしわかった。僕の得意なゲームだ。その様子をにこにこ微笑みながら、メイは対面型のキッチンで、夕食を作り始めた。その風景は、恐ろしく平和な風景に見えたと思う。でも、メイと僕は大人のどろどろした欲情の海に埋もれたヒトであり、無垢なメイの息子は、純粋に僕を遊んでくれるパン屋の兄さんだと思っていたと思う。

彼は、連勝していた僕を「すごいよ。やっぱりお兄ちゃんだね」と言った。僕にとっては、バイトのない日に友達と遊んでいたゲームだったし、手を抜いたつもりだったけど、それ以上に彼はうまく走ることができなかった。ぶうとふくれた顔の彼をなだめるかのように、メイは、テーブルに夕食を並べ始めた。ビーフシチューである。温かそうなそのビーフシチューを見て、メイのことを見ると、彼女はなんとなく自慢気に見えた。彼と、僕とメイは、食卓を囲み夕食を摂ることにした。

汚い大人が、何も知らない少年と。

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