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bakery 9
Last Modified : Sat, January 06 22:02:36 2018
2002-08-02 / bakery 9
食事を済ませ、コカコーラを飲みながら、彼の習っているピアノの腕前を披露してくれることになり、僕とメイはソファーに並んで座り、彼の演奏を聴いた。まだ習い始めて間もないらしく、何かの練習曲を聞かせてくれた。演奏を終えて、えっへんと僕達を見たのを確認して、二人で拍手をする。
「ねぇ、お母さん。お兄ちゃんがパパだったらよかったのにね」
「…。そうね」
少し間を置いて、彼女は同意した。困った顔をしながら微笑む僕に、彼はパパは、テレビゲームも一緒にしてくれないし、一緒に食事もしないし、ピアノの演奏だって聴いてくれなかったと僕に聞かせた。そう。この作られたような幸せな風景は、僕がこの家にとって異邦人であるから、存在し得た風景なのだ。僕は学生で、経済力もなかった。マンションも買うことができないし、彼をピアノ教室に行かせることだって不可能なのだ。
…
遊び疲れた彼を寝かしつけると、メイはソファーに座っている僕の隣に座った。
「今日は疲れたでしょう? あの子もすごく喜んでいたわ。ありがとうね」
「ううん。いいんだよ。僕も楽しかったし、料理もうまかったし」
「ねぇ。キスして」
僕らは、キスをした。彼女のキスは常に情熱的で、激しく舌を絡ませた。
「私たちも寝ましょう」
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