Web Café Weblog

Web Café Weblog - Archive

神戸長崎大阪の旅 03

Last Modified : Sat, January 06 22:02:33 2018 RSS Feed

2002-10-07 / 神戸長崎大阪の旅 03

ドアの開く音で目が覚める。彼はもうすでに目を覚ましていて、部屋に入ってきたのだ。

「おはよう」ガラガラの声で言う。タバコを少し吸い過ぎたようだ。

「おはよう」彼が答える。

僕は身体を起こして、トイレに行く。プラスティックでできたよくあるホテル風のユニットバスだ。バスは狭くて(客船の中だから当然だ)、トイレは水洗で、洗面用具が綺麗に並べられている。トイレを済ませると、彼に聞く。

「朝食は食べた?」

「食べたよ」彼は答えた。少し眠そうな顔をしている。昨夜の酒が効いているのかもしれない。

「僕も食べに行こうかな」食欲はあるのだ。

「10:00 までで、もう食べられないと思う」彼は残念そうに答えた。そうか。朝食には間に合わなかったか。仕方ない。朝食は食べることができなくても、11:30から昼食の時間だ。問題ない。それまでに僕は、大浴場に行くことにした。彼はそれに関して意見を述べた。

「ああ、そうするといいよ。僕も入ってきたけれど、サウナもあって綺麗だったよ」

何も持たずに、大浴場に行く。彼が何もなくても入れると言ったからだ。大浴場は、おおよそよくある銭湯の半分ほどの広さで、水風呂と泡風呂と、普通にお湯を張った湯舟があり、スチームサウナと、サウナがあった。海が見えるように、ガラス張りで、おそらく山口県のあたりの景色が見えている。山と、小さな船が見える。

僕は、またいつもの順番で身体を洗い、頭髪を洗った。山口県の沖合いでも僕の順序は一緒なのだ。泡の激しく吹き出している風呂に入り、山口県の山並みを眺める。僕は、船の上でお風呂に入っている。外は海と山。なんだかおかしい。うふふ。

お風呂から上がると、髪をいつも使用しているドライヤで乾燥させて、今日着るべき服をスーツケースから取り出して、少し汗ばんだ身体を拭きなおして首からかぶった。黒いTシャツだ。ジーンズを履くと、彼を昼食に誘った。もし、もう食べられるのならば、飯に行こう。彼は、実はもうおなかが空いているんだと笑いながら答えた。問題ない。一緒に行こう。

部屋を出ると、昨夜の彼女達がいた。もしかして、昼食に行くのかもしれない。目が合ったのでご飯を食べるしぐさをしてみる。「そうです」というような顔で笑ってこっちを見た。問題ない。一緒に行こう。

昼食は、和洋どちらか選べるようで、僕たちは和食を選択した。これまでの食事はフランス料理ばかりで、僕たちは心底うんざりしていた。日本人は和食に限るなと、誰かが言う。僕も賛成だった。味噌汁が飲みたい。白いご飯が食べたい。

やはり海が見えるホールで、ボーイに不自然なまでの丁寧な礼で歓迎されて、僕らは席についた。当然ボーイが椅子を引き、押して適正な位置に戻す。僕は、自分で椅子を引こうとして、ボーイを困らせた。でも、ボーイは職業的な笑顔で、僕に笑いかけた。いいんですよ。私がやりますから。

和食をすべて食べ終えた。それは、船上の昼食らしく多すぎず少なすぎず、量ったように僕の胃にはちょうどよかった。お酒も残っていないし、ボーイは、遠くで僕らのお膳の減り具合を観察していた。目があうと職業的笑顔で僕の顔を見た。あまりに自然な笑顔であったので、僕も思わず笑顔になってしまう。僕たち全員の食事が終わったのでまた部屋に戻る。戻ったところで、また電話があり、麻雀に誘われる。昨夜、船内の探索に出たのでもうすることがなかったので、博多港に到着するまでの間に少し遊ぶことができるだろう。船はいつのまにか日本海に出ていて、波も内海の瀬戸内海に比べたらいくらか揺れを感じるようになっていた。僕らはその大きなゆっくりとした揺れのなかで、牌をかき混ぜては積み上げて、また崩して、かき混ぜた。

麻雀が途中の状態で、博多港に到着した。ゆっくりと港を進みゆっくりと接岸する。空はゆっくりと夕方へと向かい太陽は雲の間から少しだけ顔を出していた。そろそろ船から降りなくてはならない。やっと地面に足をつけることができる。水の上では、どうしても揺れと暮らさなくてはならないのだ。

博多港ですぐにバスに乗り換えて高速道路を走る。僕は少しだけバスの中で眠ることにする。少しだけ飲んだビールが眠りを誘う。バスの揺れは乳母車の揺れであり、倒したシートはベビーベッドだ。眠りが、僕の上に覆いかぶさってきた。

目を覚ますと、すっかりと夜になっていて、高速道路の緑色の看板は長崎の地名を表示している。身体が少しだけ軽くなったように感じる。頭はすこしだけぼぉっとするけれど、何かが身体から降りたように軽くなったのだ。バスは高速道路を降りて、程なく長崎市内に入る。今日の長崎では「長崎くんち」が催されているので、車も少し多く出ているし、街には多くの人々が、歩いていた。諏訪神社の前を通ると出店が見える。ちょうちんの赤い光が見える。なんだか懐かしい気持ちになる。

長崎プリンスホテルに到着して、荷物を降ろすとまたすぐにバスに乗り込み卓袱料理を食べに行く。店はなんだかとても高そうな割烹であった。卓袱料理というのは、出島があった長崎では貿易で入ってくるものをふんだんに使った料理であるという。僕はこの卓袱料理というのを初めて聞いたし、初めて食べた。芋焼酎をお湯割りで飲む。前にも書いた通り、料理の味に関してはあまり感想が出てこないのだ。芋焼酎はなかなか飲みやすくて、さらっとしていたので、結構飲んでしまった。

料理店を出たあとに、最後の夜なので夜景をみんなで見に行きましょうということになった。長崎の夜景は有名であるとのことだし、最後の夜に一人でホテルで過ごすこともないだろうということで、出かけることにする。タクシーに乗り夜景の見える山まで登る。一般的な観光地であると思う。山の名前は失念してしまった。夜景はなるほど 1000 万ドルの夜景ということはある。山の中腹まで綺麗に輝いている。平野部が少なくて高い山に囲まれているために、下から見ても上から眺めても綺麗な夜景が楽しめるのだという。

夜景をおおよそ眺め終えると、カラオケに行こうということになる。以前にも書いたけれど、僕はカラオケがあまり得意ではない。でも、みんなの歌を聞いているのは楽しいので、そしてもちろんお酒が飲めるので行くことにする。カラオケでは、みんな楽しく歌っていたし(とても物まねがうまい人がいて、おおいに笑った)、僕もお酒を沢山飲んでみんなの歌が聞けて、純粋に楽しかった。

カラオケが終わって、タクシーでホテルに戻ると、僕と同じ部屋の彼(ずっと一緒の彼だ)が、荷物を部屋に置いたことを忘れている。どうやら飲みすぎたようだった。記憶がないけれど、部屋に行ったら思い出すだろう。部屋に行くと、やっと思い出したようで、「ああ。やっと思い出した」と大きな声を出していた。そう。酔うといろんなことがわからなくなる場合があるのだ。時として。気にしない。思い出したのだから。

それから、なぜか若い男の子(初日にお酒に誘っていた彼だ)と、一緒にいると女の子の部屋に入っていく。女の子ともう随分仲良くなっている様子だった。僕は、なんだか眠くなって、彼らの他愛もない話を、右の耳から入れて、左の耳から出しながら、二人の女性のどちらかが眠ることになるベッドで横になった。うとうと。

目を覚ましたら二人の女性が、裸になって僕の隣で横になっていた。若い彼はいない。僕はいつの間にか、バスローブを着ていて、彼女たちもゆっくりとした息で、僕の左腕と、右腕を枕にして寝ていた。二人の身体は汗ばんでいて、暖系色の照明を少しだけ反射して輝いていた。

ということは、あるわけがなく、僕と彼はそれぞれの部屋に戻ることにした。呼び鈴があるので、それを鳴らす。出てこない。何度か鳴らす。彼女達も自分の部屋のドアから顔だけをだして、少し心配な顔をしてこちらを見つめている。僕と一緒の部屋で寝ることになるのを恐れているのかもしれない。それはそうだ。気持ちはわかる。

最終的には、呼び鈴の効果は全くなくて、ノックも何度かしたけれど、いつも一緒に寝た彼は起きてはくれなかった。あの酔い方では、今、泥のように眠っているだろう。仕方ない。彼は飲みすぎたのだ。僕が女の子の部屋で、鼻の下を伸ばしているのが悪い。若い彼の部屋が開いたので、寝かせてもらうことにする。ソファーがベッドになったので、僕はちゃんとベッドで寝ることができた。若い女性に囲まれて眠るのも幸せかもしれないけれど、明日の女性の視線もそれに反比例して恐ろしいものになるかもしれないし(その種の情報は、なぜか恐ろしい速度で広まるものだ)、ならないかもしれない。僕は、男性の部屋で、ソファーベッドと言っても眠ることができたので、安心した。少なくとも床ではない。

時刻は 3:30 過ぎ。僕は、やっとゆっくりと眠ることができた。健全に。安全に。

コメントする

コメントの投稿

Trackback Data

この記事に対する Trackback
https://web-cafe.biz/~prelude/diary/mt-tb.cgi/633
この記事のリンク先
"神戸長崎大阪の旅 03" @Web Café Weblog

↑Top

Powered by Movable Type Pro Copyright © 2000-2018 Web Café Prelude All Right Reserved.